上下駆動の速度制御で注意すべきことは?
- 学くん
- 照代さん!お客様から上下駆動で速度制御できるモーターはあるか聞かれました。前にも同じような問合せがあったので、今回は自信をもって答えられそうです。(詳しくはバックナンバーをご参照ください。)
- 照代さん
- あら、頼もしくなったわね!何の製品を紹介するの?
- 学くん
- ブラシレスモーターの電磁ブレーキ付タイプです!
- 照代さん
- ブラシレスモーターで上下駆動するときに気を付けなければいけないことは覚えてる?
- 学くん
- …えっと…すみません。忘れました。
- 照代さん
- もう!下降時にモーターの出力軸が外力で回されると、永久磁石(ローター)によりモーターが発電機になってドライバに電気(回生電力)が流れてしまうから注意よ(図1)。そして、ドライバでは保護機能がはたらき、アラームが発生してしまうの。だから、この回生電力を吸収してくれる「回生抵抗」が必要よ。
-
図1 ブラシレスモーターで回生電力が発生する一例
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①重力によりワークが下降し、モーター軸が回される
②モーターで発電された電気がドライバに流れる
(回生電力)
③アラーム発生 - 学くん
- 上下駆動の他にも、回生抵抗が必要な場合はありますか?
- 照代さん
- 例えば、回転テーブルなど大きな慣性体を止めるような使い方では、モーターの出力軸が回されてしまうため必要な場合があるわ。
- 学くん
- なるほど~。今回は上下駆動なので、回生抵抗もお客様に紹介します!
- 照代さん
- ちょっと待って!上下駆動で速度制御できるモーターはブラシレスモーターだけだったかしら?
- 学くん
- ブラシレスモーター以外にもあるんですか?
- 照代さん
- まだまだ勉強不足ね、学くん。ACスピードコントロールモーター(以下、ACスピコン)DSCシリーズの 電磁ブレーキ付タイプでも、上下駆動で速度制御ができるのよ。
- 学くん
- でも、これまでのACスピコンだと、巻き下げ運転で速度制御できなかったですよね。
(詳しくはバックナンバーをご参照ください。) - 照代さん
- そうね。ただ、DSCシリーズは、設定速度よりも速く回った時にブレーキ電流を流して回転速度を制御するの。
この制御を「減速制御」と言うのよ。
図2を見て。回転速度によってブレーキ電流の大きさを調整して、設定速度に近づけているの。
ちなみにDSCシリーズは上下駆動でも回生抵抗がいらないわ。 -
図2 減速制御時の起動応答例(巻き下げ方向)

①区間 | 巻き下げ方向に運転開始。運転電流で加速 |
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②区間 | 設定速度を超えたので運転電流を減らすが、巻き下げ負荷により回されてしまい加速が続く |
③区間 | ブレーキ電流に切り替わり減速する |
④区間 | 減速しすぎたのでブレーキ電流を調整 |
⑤区間 | 一定のブレーキ電流となり、設定速度どおりに運転する |
- 学くん
- どうして回生抵抗がいらないんですか?
- 照代さん
- ACモーターには永久磁石が使われていないから、回生電力がほとんど発生しないの。
だから、上下駆動でも回生電力を気にする必要がないのよ。 - 学くん
- 回生抵抗がいらないということは、部品点数が1つ削減できますね。
- 照代さん
- いいところに気が付いたわね。だけど、DSCシリーズで上下駆動するときは、運転サイクルと運転デューティ※に制限があることも伝えてね。
- 学くん
- わかりました。取扱説明書をよく見て、お客様にご提案します。
- 照代さん
- DSCシリーズのモーターとラック・ピニオン機構を組み合わせた、直動機構を簡単に 構築できるLシリーズもあるからご紹介してみて!
- 学くん
- はい!
※ 運転時間と停止時間の合計時間を1サイクルとしたときの運転時間の割合